30分でわかる企業の経営環境~2017年版中小企業白書より~

30分でわかる企業の経営環境~2017年版中小企業白書より~

EQAグローバルレジストラ㈱ 代表取締役・中小企業診断士
円城 将義 氏(金沢西RC会員)

中小企業・小規模事業者の現状
 経常利益は過去最高水準にあります。2008年9月のリーマンショックでがくんと落ちますが、その後右肩上がりに改善を続けています。ただ大企業は大きく伸び、中小企業との差は歴然としています。
経済産業省のものづくり補助金の審査員をしていて目立つのは、生産性の伸び悩みを改善するためのロボット、AI、機械の一部自動化の導入です。小規模の工場では運用が大変なので、そういうことが出来る人を呼んできて何でも提案してもらうやり方もあるわけです。
開廃業等による企業数の変化
2009年に421万社あった事業者が2014年には382万社と約40万社減っており、小規模事業者の廃業が非常に多いのが特徴です。
開廃業の現状は業種によって大きく異なります。建設業、宿泊業、飲食サービス業は開業率が高く、製造業は開業率が低くなっています。廃業率では医療、福祉が低く、宿泊業、飲食サービス業は高く、両業種は高開業、高廃業ということで、どんどんできて、どんどん消えるイメージが強く、経営の難しさを感じます。
中小企業の雇用環境と人手不足の現状
人手不足感が強まっており、特に規模の小さな中小企業で従業員数が減少しています。片山津のお客さんのところで世間話をした際、小松にイオンモール新小松が出来たとき時給1,000円か、それ以上で従業員募集をかけたところ、ゴルフ場のキャディーさんが応募してきて、これまで夏の暑い日にキャディーで回っていたのに涼しいところでニコニコしていてお金がたくさんもらえるという話でした。こんな形で人が流れているわけです。
事業の承継と人材
事業主に息子がいたとしても東京から帰ってこないとか、1回会社に入ってもけんか別れしたり、親子でうまくやるのはなかなか難しいようです。このため親族外承継が3分の1を占めているというのは意外な事実として知っておくのもいいと思います。社長が変わって赤の他人になると、これまで築いてきた営業のパイプが希薄になるという課題も指摘されています。
事業譲渡・売却・統合(M&A)の検討状況については後継者がいる企業の場合、5分の1程度がやってもよいと答えたのに対し、後継者がいない場合には3分の1まで増え、最近はМ&Aが事業承継検討の1選択肢になってきています。
人材の不足感があるなかで従業員を辞めさせない対策も重要で、職場環境の改善、業務負担の軽減、収益率の向上で会社の魅力をアップし、採用や定着率の向上に成果を上げている企業さんもあります。
お手元の中小企業白書概要の四角の水色の部分を眺めているだけでも企業の置かれている状況が分かりますので、改めてご覧いただければと思います。