21世紀の科学技術教育への期待

21世紀の科学技術教育への期待

北陸先端科学技術大学院大学 学長特別顧問 潮田 資勝 氏

 潮田氏は東京の高校を卒業後、アメリカへ渡り、ダートマスカレッジ、フィラデルフィアの大学院を経てカリフォルニア大学のアーバイン校に就職、その後東北大学の電気通信研究所、辰口にある北陸先端科学技術大学院大学学長、筑波で国立の物質・材料研究機構、澁谷工業技術顧問や長年、金沢工大の客員教授なども勤められ、この日の話が自らのバックグラウンドに影響されているということで自己紹介から始められました。
 副題として「リベラル・アーツのすすめ」としました。日本は国力向上という意味で実学教育、工学とか理学とかを重視してやってきましたが、教育という面では第2次大戦後もそれほど変わっていません。
 総合科学技術会議では安倍内閣になってから社会に役立つイノベーションを推進しようという考えかたになっています。イノベーションというのは必ずしも技術やサイエンスの問題ではなくて政治でもそうですし、経済、芸術、文化全体で社会を変えていく必要があるわけです。しかし政治だけはなかなか変わらない。知的レベルの高い政治家が求められています。
 リベラル・アーツは日本語では一般教養と記していますが、実際にはもうちょっと違う意味があります。一番大事なのは宇宙における自分の立ち位置を自覚、新しいことを考えられる人間を作ることです。そのために必要なのは自然科学、社会科学とか人文系の学問でもあり知識でもあるわけです。芸術とか、文学とか自由な考えができるようになったのがルネッサンス。民主社会のいい構成員、あるいは人材を養成するためにはエンジニアリングやサイエンスだけでなくて、政治家や経済をやる人が全体を俯瞰するような知識と考えを持っていることが大切です。