東洋大学経営学部 非常勤講師 武内 成氏
1990年代に入り、バブルが崩壊したあたりから何をしても成功しない時代になりました。
例えば半導体、これはNECが1996年にトップになります。その当時の半導体、セミコンダクター1個あたりの値段がアメリカは20ドル、日本は16ドルでした。ところが1990年代の終わりになるとサムスンエレクトロニクスが出てきて12ドルで作ったのです。それから以降、NECはパソコン業務を放棄します。
この21世紀というのはITの時代であることは確かです。ITをどううまく使うか。これが企業経営にとって重要な意味を持ちます。
アップル・コンピューターを率いたスティーブ・ジョブズが何をやってきたかというと、引っ張っていく力ですね。あの経営者というのはものすごく力があった。エレベーターで社員が一緒になると、社員は次の階で降りたというのです。一緒にいると息がしに くい。それほど迫力があったということなのですが。そのジョブズが言ってきたのがソニーに追いつき、追い越せなのです。アメリカの会社が日本のソニーを意識してやってきたのです。
アイフォンの中を開いてみてびっくりしますが、ほとんど機械がない。ソニーの機械はいろんな部品が集められて出来上がっています。アップルはすべてをコンピューターのフィルムの中で処理するという方針です。ソニーは16万人という従業員を抱え込み、それを使わざるを得ない。リストラという状況になると、優秀な人ほど早くやめて、どこかへ行ってしまう。
15年ほど前に聞いたことですが、成田を飛び立つ飛行機に大手メーカー各社の技術者が乗っていて、みんな釜山行きなのです。そして日曜日に帰ってくる。高いお金で雇われて、その結果、技術が流出してしまいました。
日本はやはり技術開発関連の仕事を徹底してやり、発展させていかなければならないと思います。いま東南アジアが狙われている。日本はそこへ入っていこうとしています。だけど、そのうちにレベルアップしてくるのは当たり前。それをどう計算に入れているかです。
情報化の時代で、情報はありすぎるくらいあります。その何を捕まえるかというのは経営者の哲学じゃないかと思います。
GEのジャック・ウェルチがM&Aをかけるときに1回だけ失敗したことがあります。それは何かというと、企業文化の全く違うものを合併した。結局、切り捨てざるを得なかった。そういうことを考えると、自分たちの企業の文化を踏まえたうえで、どういうところへ展開していくか、多角化していくか、ということが最大の問題になってくるわけです。