金沢市政にかける想い

金沢市長 山野 之義氏

 昨年12月に市長に就任した。選挙には5人が立候補し、全員の票を合わせると約13万票。私と(前市長)山出さんとの差は約1300票。選挙のプロに言わせると、1%の差は誤差の範囲内、どっちに転んでもおかしくないという。
ここに表れた民意は「山野に全権を委任したのではない。先輩方が築いた伝統や文化といった金沢の個性をきちんと守りながら、変えるべきところは変えろ」というものだと思う。
これを3つの側面から考えた。1. これまでの市長が採った施策を踏襲するもの 2. これまでとやり方、切り口でやや差異があるもの 3. これまでは取り組んでこなかったもの。
1は、金沢の伝統工芸や町家、文化などを残すこと。これらは金沢の個性だ。金沢は昭和40年代の高度成長時代に、全国に先駆けて景観条例を作った。開発を規制しようという条例だが、金沢らしさはきちんと残すことができ、1周遅れのトップランナーと言われるようになった。
2は、教育やスポーツなど子どもに対する施策。これまでは、あまり明確に取り組んでこなかったように思う。中でも偉人教育を進めたい。人間は人物を通じていろんなことを学ぶ。金沢の子どもたちに、金沢の偉人を学んで金沢を好きになってほしい。スポーツも同様だ。
3は行政の世界に営業、プレゼン、スピードといったセンスを植え付けたい。これまでは本物のまちづくりをすれば人が来てくれると思っていた。それではダメ。いい町をつくったら、自信をもって知らしめていくことが必要だと思う。
入園者が急増した旭山動物園は、変わった動物が来たわけでない。見せ方を変えたのだ。ペンギンを観客近くで歩かせたり、シロクマが餌をとる瞬間を見ることができるようにしたのである。
スピードも重要だ。公約の1つに街中に公衆無線LANを2年以内に構築することを挙げたが、日進月歩の今、2年では遅い。9月17日に市内で始まるイベント「ジャズ・ストリート」の初日に無線LANを自由に使える環境をつくることにした。
山野のキャッチフレーズのようになっている金沢でのフルマラソン開催も、2015年11 月3日午前7時スタートと日付を付けた。これにより、夢が目標になる。目標が決まれば課題が分かる。課題が分かれば工程表を作ることができる。数値化することでスピード感を出せる。
こういうことは、これまで行政にはなかった。是非、徹底させながら、これからのまちづくりを進めたい。