金沢城の価値と特徴、魅力

金沢城の価値と特徴、魅力

石川県文化財課 主幹
柿田 祐司 氏

 オリンピック、パラリンピックが開催される2020年に完成予定の鼠多門、鼠多門橋復元に伴う発掘調査の成果を中心にお話させていただきます。
 金沢城では復元整備が進んでおりまして、主な4点は菱櫓五十間長屋、河北門、橋爪門、玉泉院丸庭園です。玉泉院丸庭園の色紙短冊積石垣は普通石垣では使われないような意匠性の極めて高い石垣群で、庭園を構成する重要な要素の一つであり、金沢城を代表するものです。
 鼠多門は庭園の北西の位置にあり、鼠多門橋が鼠多門から金谷出丸(現在の尾山神社)につながっていました。橋は明治10年に老朽化のため撤去され、鼠多門は明治17年に火災で焼失しています。2本の中央大柱礎石が残っており、柱は四角ではなく、四角の隅を切り落として八角形のような形をした柱であることが分かりました。鼠多門は建物の方が重要だったのでしょう。普通とは逆に柱に合わせて石垣の方を削って施工したという特徴が見られました。
 今回の調査で多量に出てきた遺物として海鼠(なまこ)漆喰がございます。白漆喰の下地の上に厚さ2ミリから5ミリ程度の黒漆喰を重ねて塗ったもので、炭の粉か黒漆を調合したものであると考えられています。三十間長屋や石川門など今残っている江戸時代からの建物は白漆喰なので、鼠多門の海鼠壁の黒漆喰は特徴的と言えます。
 最後のスライド写真になりますが、三十間長屋、玉泉院丸庭園、尾山神社がありまして、かつては鼠多門が建ち鼠多門橋がかかっていました。藩主や藩主の子供が金谷御殿から橋を渡って鼠多門をくぐり、坂を登っていって玉泉院丸庭園で遊んだり、色紙短冊積石垣の前を通って二の丸の方へ上がっていったりする様子が、今後鼠多門と鼠多門橋が復元されることで想像することができるようになるのではないかと考えています。