英国から眺めた日本

英国から眺めた日本

(株)辻家庭園保存会 代表取締役 辻 卓 氏(金沢西RC会員)

 孫の日本語教育を兼ねてイギリスへ行き、それ以前にも私の娘がロンドンに留学して以来、約20年経ちます。英国というのは、斜陽大国というイメージでしたが、ずっと住んでみて当初のイメージと大分違うなということを実感するようになりました。一口で言いますと、向こうは大人の国です。日本は子供という感じです。どこからそれは来るのかというと、例えばゆとり、余裕なんですね。余裕の差だと思います。
最近は経済的な指標ばかりでなく幸福度というのを比較するようになりました。先進国でトップは英国です。2008年のデータですが、幸せを感じている人は51%です。次はカナダで45%。日本は先進国で中くらいに位置しており、28%が幸せと思っている。予想よ
り多い。
ところが自殺率を見ると世界100カ国のデータで一番高いのはリトアニアで人口10万人当たり34.1人と出ている。2番目は韓国の31人、3番目はロシアで30人、日本は7位で24.4人。イギリスは59位で6.9人です。日本はイギリスの4倍くらいの高さです。
レジャーの質も全然違います。日本は上層階級の趣味はゴルフ、一般庶民はパチンコとかね。向こうは、ゴルフはもちろんありますが、週末になると別荘へ行きます。高速道路は郊外へ行く大きなキャンピングカーの列が続く。もう一つシューティング、射撃も盛んです。
フェアトレードという言葉を聞かれたことがおありだと思いますが、日本語に直せば「公正取引」です。こういう認識が一般に浸透しています。これはまさに英国の国民の心の余裕の現れの一番象徴的なものと思います。フェアトレードを標榜している店に同じ商品が20%から30%高い値段で売られている。日本ではそんなところで買わないが、英国ではわざわざそこへ買いに行く。安いというのは何か理由があるはずだ。正当なら問題はないが、例えば不当労働。安い労働賃金で下請けをいじめたり、バナナを輸入する際、向こうの国で子供を不当に安くこき使った結果、安いというのであれば人々は買わないのです。日本では見られない精神です。
街なかでもう一つ気がつくのは乳母車が多いことです。地下鉄に行くと階段などでは周りの人が競うようにして乳母車を抱えたり、ひっぱったりしてくれます。娘は、自分の子供というより社会全体が子供を育てる感覚だといいます。
理想的な民主主義が機能しているという点では、英国がそれに近いと思います。それが出来る一番の理由は彼らの時間的余裕にあり、と結論づけたいと思います。