脳卒中は時間との闘いだ

脳卒中は時間との闘いだ

医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院 脳神経センター長 廣瀬 源二郎 氏

 厚生労働省の統計で死因の順位を見ますと、ガンとか悪性新生物といわれるもので亡くなる人が多いわけで、その次が心筋梗塞とか心臓の病気、その次が最近まで脳卒中、つまり脳血管障害でしたが現在は肺炎で亡くなる人が非常に多くなり、脳卒中は4番目に落ちました。年間の死亡者数は約12万人で、決して少なくなっているとはいえません。
 脳卒中といわれるものは、血管が細くなり詰まる脳梗塞、脳の中で血管が破れて出血する脳出血、血管が生まれつきやや弱いために起こるくも膜下出血があります。この中で脳出血は高血圧を治せばよいので圧倒的に減っています。脳梗塞は78%、脳出血は15.5%、くも膜下出血は6.5%の構成比で、一番ポピュラーな脳梗塞は①アテローム血栓性梗塞(コレステロールの高い状態が続くと太い血管に動脈硬化が起こる)②ラクナ梗塞(高血圧が原因で、細い網目状の血管の動脈硬化)③心原性脳塞栓症(心臓病・不整脈で血管が詰まる)の三つがあります。
 くも膜下出血は急激なひどい頭痛で始まります。吐き気もある。死ぬほど痛いと言ってだんだん意識がなくなる。脳の外側の血管が破れるからです。
 2005年に血のかたまりを溶かす薬が開発され、発症から4時間半までの人は、こういう薬を飲みましょう、注射しましょうということになりました。「Time is brain!!」脳卒中の治療は時間との勝負です。患者発生から2時間以内に我々のような専門病院に来ていただいたら治る確率が非常に高くなります。
 脳卒中にならないためには生活習慣の改善が重要です。お酒の場合、ビールなら中びん1本か、日本酒1合、水割り1杯、ウイスキーならダブル1杯、ワインはコップ2杯です。この程度なら非常にいいんです。虚血性を起こす危険度が減ります。きょうは奥さんに「いい話を聞いてきた。1合だけくれ」と言ってください。生活習慣の改善は、このほか禁煙・無煙、少食(腹八分目)、運動・歩行(定期的な運動)、十分な休養(休日・睡眠)、人・物に接する、ストレス解消・趣味を持つ-などです。
 これはホットニュースなんですが、血中に「若返り因子」が見つかりました。若いネズミの皮膚を切って、よぼよぼのネズミにつなぎ半年経つと、よぼよぼのネズミが若いのと同じくらいに筋肉も大きくなって頭もしっかりしてくるデータがつい最近、サンフランシスコの大学で確認されました。GDF11という物質がいいということで、ネズミさんでは間違いなく現れますが、果たして人間でどうなるかは実験してありません。
 こういうのを夢見ながら、ちゃんと「意(こころ)を美(たの)しませれば年を延ぶ」美意延年という言葉が私は好きでして、楽しんで生活すればいいですよ、ということで、きょうのお話を終わりたいと思います。