能登の里山里海

能登の里山里海

(株)ぶなの森 代表取締役 高峰 博保氏

 能登の里山にはブナ林のほか、オオイワカガミ、チゴユリ、ガマズミなどの植物を見ることができます。一方、里海では、日本で唯一奥能登に残っている揚浜式の塩田があります。能登の里海は海藻も豊富です。貴重な民俗文化財も残っています。有名なのは「あえのこと」です。田の神様を12月に迎え入れて、2月にお帰りいただく風習です。そのほかに門前の鬼屋神社で行われる「ぞんべら祭り」などがあります。
 能登の里山里海エリアでは人口の減少がどんどん進んでいます。高齢者の比率も非常に高くなっています。七尾市や輪島市など核となる自治体でも4割を超えています。先般、日本創成会議が消滅可能性のある自治体を発表しました。20歳から39歳までの女性(子どもを産み育てる世代)が2040年には、能登町で81.3パーセント減少するという数値が出ています。羽咋市も69.6パーセント減少するとされており、実は、奥能登だけではなく中能登エリアも安閑としてはいられない状況です。
 現状、森林の多くが放置されています。戦後の拡大造林政策により杉が植えられましたが、途中から材木の価格が低下して外材に押され、国産材をいくら切り出してもお金にならないことから、森林が放置されました。倒木が放置されるとどうなるのか?数年前に浅野川が氾濫しましたが、その要因の一つが森林の放置であると言われています。激しく雨が降ると林内に残っている倒木が流れ出し、下流の橋の欄干に引っかかり山のようになって両側に水が溢れるということが起こります。町中に住んでいる人にとっても極めて由々しき状況が里山の森林のなかで起こっているということを認識してほしいと思います。石川県は森林環境税を導入して7年目ですが、毎年3億6000万円ほどを放置されている森林の整備に充てています。
 私たちは里山里海を有効に生かすために、森歩きのガイドツアーに取り組んでいます。森にできるだけ親しみ、森が持っている可能性を感じてもらうために、昨年10月から輪島市の健康の森で「癒やしフェスタ」というイベントも行っています。他方で、人の誘致をすすめる取り組みもしています。主に子育て世代を誘致する目的で「能登定住交流機構」という会を立ち上げました。東洋大学の学生が能登の里山の保全活動に参加していますが、初年度に参加した学生が今年から能登で就職することになりました。
 今後は、農産物にどのように付加価値を付けて売るかということを考える必要があります。その結果として、利益を出すことができれば、そこで働く人も増えることになります。能登では、若い定置網の従事者がたくさんいます。一次産業のジャンルでも、若い人がたくさん来ています。今後も、能登で若い人達が新しい仕事として関われるような受け皿を作りたいと考えています。こうした活動を通じて、里山里海を有効に活用していただきたいというのが我々の願いです。