能楽堂の楽屋から

能楽堂の楽屋から

中日新聞社北陸本社経済部長 室石 和夫氏(金沢西RC会員)

 昨年、能楽森田流笛の師範にしていただき、10月から能楽堂の楽屋入りをしました。
 楽屋には15畳敷きぐらいの和室が4部屋あり、それぞれシテ、ワキ・狂言、囃子、その他と居場所が決まっています。囃子方は、出番の前に囃子の部屋に集まり「よろしくお願いします」とあいさつします。
 ワキはワキの部屋、シテは幕の内側にある「鏡の間」で、出演前の心の準備をします。囃子方はワキ、シテにあいさつし、「鏡の間」に並んで「お調べ」という短い演奏をします。囃子方は、幕を人が一人通れるぐらい開けて舞台に出ます。これを片幕と言います。舞台から戻るときも片幕で入ります。

能楽堂の楽屋から シテの出入りでは幕を大きく開けます。戻るときは、後見役のシテ方が幕の内で正座して待ち、深々と頭を下げて迎えます。シテとワキはそれぞれの部屋で控え、囃子方は廊下からシテとワキに「ありがとうございました」とあいさつします。
 森田流は家元がおらず、観世流シテ方の宗家が家元の代行となっています。その観世宗家は「舞台は戦場、楽屋は本陣」と話し、舞台の緊張を楽屋の内から持つことの大切さを説いていました。舞台だけでなく、楽屋などでの居ずまいの美しさも求められます。