聴覚障害者のバリアフリーについて

聴覚障害者のバリアフリーについて

石川県立ろう学校 講師
嶋 哲昭 氏

「目が見えないことは人と物を切り離す。耳が聞こえないことは人と人を切り離す。」という言葉があります。耳が聞こえないことと人と人を切り離すことはぴんとこないかもしれませんが、ここがコミュニケーション障害とも言われている由縁です。
1 県立ろう学校とは
 石川県立ろう学校は、県内唯一の聴覚障害者のための学校で、今年110周年を迎えます。
聴こえないということは日本語の言語力に影響があります。例えば、同じ「あく」という単語でも、発音で違うものがありますので、動作や絵などを使って理解を助けることをしています。また、聴こえないということは、人間関係に影響があります。ろう学校では、聴こえない人とのかかわり・聴こえる人とのかかわりをサポートしています。
2 就労関係
 ろう学校卒業後3分の2が仕事に就きますが、10年間で1年以内に離職した者が4名います。コミュニケーション不足などが原因かと考えています。勤労意欲がある者については会社が支援してくれることもあります。県内には障害者雇用に意欲的な企業や、本人の強い希望で就職支援につながる企業もあります。
3 きこえの特性
 聴力を補うために補聴器・人工内耳などがありますが、後ろから声をかけられても聞こえません。会議でいろんなところから話をされても聞こえにくいです。カクテルパーティー効果もありません。
4 合理的配慮
 障害者差別解消法が施行され、社会的障壁を取り除くための合理的配慮を行政機関・地方公共団体が義務として行っていくこととなりました。
 聴覚障害者への合理的配慮は何かというと手話・要約筆記・筆談などの情報保障です。
 最新のテクノロジーに筆談パッドがあります。こちら側で記載した字がさかさまになって相手方にダイレクトに記載されるので、学校では漢字の練習などに使用しています。また、音声認識アプリもあります。本校では職員会議などで使用しています。
 先日、ろう学校にJAXA広報部所属の聴覚障害をお持ちの春日晴樹氏が講演に来られ「聞こえないことを周りにつたえなきゃ」と言われました。これが聞こえない人のバリアになっているのです。
 聴覚障害者のバリアフリーというのは何かというと、合理的配慮をしていただくことと「優しさ」だと思っています。テクノロジーが進んでも、人間と人間の付き合いなのです。