結晶学に魅せられて

結晶学に魅せられて

金沢大学名誉教授 松本 崧生氏

 地球にある結晶は、固体の主要なものです。地球自体は大きな卵みたいな状態になっており、外に殻があり、その次に白身があり、中に黄身があります。地球も外側に地殻という表面があって、白身に相当するのがマントルです。この中に地球の中心部・核があります。
 地球の核というのはほとんど鉄とニッケルで出来ております。この中心を見るのは大変なのですが、一番の手法は地震波を使います。あるところは届かない、あるところは届くというふうに地球の内部を想定するわけです。中にいけば硬くなるだろうと、みんな思いますが、不思議なことに一部分は液体なのです。それ以外は全部固体で、その固体の大部分が結晶です。
 鉱物が集まって岩石を作っているわけですが、鉱物の大部分は結晶です。ここに私が岐阜県で採取した煙水晶を持ってきました。同じ種類の結晶では相対する面の角度がみんな同じ。「面角一定の法則」といって、デンマークのステノというお医者さんが発見しました。有名な人だからイタリアのトスカニー地方に呼んだのですが、恐らくスイスのアルプス越えをしたものと思われます。アルプスは非常にたくさんの鉱物が出ます。化石、地質学で有名な「地層累重の法則」を編み出しました。地層がだんだん固まって下から上に重なっていくことを見つけ、彼は大業績を上げました。
 結晶にはいろんな性質があります。ブラジルの紫水晶を持ってきましたが、熱すると色が変わります。225度で色がなくなり、黄色味を帯びてきます。放射能を当てるとまた色が戻ってきます。宝石といっても、色はいろいろ操作できるわけです。
 ダイヤモンドの成分は炭素です。マントルの200キロという深いところで出来ます。キンバーライトというパイプ状のものがあって、ダイヤモンドの粒が出てきます。
 ダイヤモンドは地表では炭ですが、地球の内部では住み心地がよく、ダイヤモンドになりたがるわけです。マグマの中にいくらでもあるわけですが、ゆっくり上げていくと全部炭に変わります。炭にならないように持ち上げなくてはなりません。
 ダイヤモンドも合成のいいのが出来るようになりました。自然のままのダイヤモンドの結晶は角が溶けて丸みを帯びています。合成のダイヤは非常に鋭い。そういう違いがあります。
 もう一つ、合成でシリコンの単結晶です。太陽電池や半導体のいろんな材料は全部これで作ります。合成のルビー、サファイア、青いコバルトなど、結晶学研究の魅力は尽きません。