石川県立音楽堂開館10年とオーケストラ・アンサンブル金沢

石川県立音楽堂開館10年とオーケストラ・アンサンブル金沢

財団法人 石川県音楽文化振興事業団 専務理事
石川県立音楽堂 館長 山腰 茂樹 氏

 音楽堂は2001年にオープンし、来年で10年になります。オーケストラ・アンサンブル金沢は、1988年にできまして、今年で20年となります。石川県は江戸時代から半世紀に渡って伝統芸能、文化を大切にした全国的にも珍しい藩でした。明治維新で大きく時代が変わってしまい、前田家も、能の師匠も東京へ行ってしまいました。そういう中でお弟子さんたちは非常に苦労しながら石川県に伝統芸能を残してこられました。戦後の日本における洋楽史を辿っていきますと、アメリカ軍がジャズを持ち込みました。ソ連の抑留帰還者を中心にロシア民謡も普及してきました。そういったことも背景にしながらオーケストラ・アンサンブル金沢(以下OEK)が設立されました。伝統文化でしっかりと耕された土地に洋楽が根付いていくといった様相でした。
初代音楽監督として、岩城宏之氏という素晴らしい音楽家を迎えることができたのも大きな成功要因でした。定期会員は、当初1,300人でスタートし、今では2,200人となって全国でも類をみない規模です。「国際性豊かなプロ・オーケストラ」が方針の一つになっています。国籍を問わずプロフェッショナルが集まってきています。古典派の定番は38人の編成でした。当オーケストラは定員40人で、一人ひとりが非常に高いレベルで技術を磨いています。こういったことで非常に特徴のある温かい音が我々の醍醐味です。
世界水準を目指して、3年に2回は世界へ出て演奏しています。海外の聴衆は非常に厳しいので、これが訓練にもなり、確実なレベルアップにつながっています。1回海外公演をしますと7、8千万ほどかかります。補助金も使わせていただいていますが、現地での稼ぎと合わせて採算がとれるように努めています。3年前に井上道義氏に交代しました。井上氏はバレエをしていたこともあり全身で指揮をするスタイルで、才気溢れる日本でも最高の指揮者です。
音楽堂も、兼六園近くに建設する案がありましたが、今となっては駅前にして非常によかったと思っています。石川県は縦にも長く、たくさんの県民が集える場所として最適です。最近では、伝統芸能とオーケストラの共演を年に1、2回行っており、日本でも類を見ない取組みも行っております。音響も国内最高水準で、ベルリンフィルの指揮者サイモン・ラトル氏も絶賛していますので、是非皆さんお越しください。
この事業の経済効果は1.65という数字が出ており、公共工事と遜色ありません。そういったことも皆さんに是非ご理解いただけるとありがたいと思っています。