知的財産に関する簡単な話

知的財産に関する簡単な話

百万石特許事務所、代表弁理士 海野 徹氏

 自社で開発したアイディアやデザイン、マークを守るルールが知的財産という制度である。
知的財産には「著作権」もあるが、今日はそれには触れず、「特許」「実用新案」「意匠」「商標」についてお話しをする。
たとえば、「消しゴム付きで、六角形、グラデーションとマークがついている鉛筆」で考えてみると、鉛筆に消しゴムをくっつけて便利になったという大きな工夫は「特許」、形が六角形で転がらなくなったという小さな工夫は「実用新案」、グラデーションをつけてデザイン性が高いことは「意匠」、高品質で顧客の信用を獲得しているマークは「商標」ということになる。
それでは、知的財産の権利が成立する流れはどのようになっているのか、以下「特許」の場合で説明する。
発明の特許を取得するためには、出願用書類を作成して特許庁に出願する。弁理士の主たる業務はこの出願用書類の作成であるが、出願は年間で約35万件もあるため、すべての出願について審査されるわけではない。
出願後1年半経過するとその内容は特許庁のホームページ(HP)で公開されるが、出願者がその後の商品の売れ行きや技術動向を踏まえて特許を取得すべきと判断した発明については、出願後3年以内にあらためて審査請求を行い、この審査請求された出願についてのみ審査される。
特許の審査は特許庁の職員である審査官が、過去に似たものはないか(新規性)と従来技術から思いつく程度を超えて、飛躍的な技術の進歩があるか(進歩性)という観点から審査を行う。特許が成立した場合には出願から20年間、権利が認められ、特許を侵された場合には差し止め請求や損害賠償請求を行うことができる。
なお、審査官により拒絶されたことに納得できない場合には、拒絶査定不服審判、知的財産高等裁判所さらには最高裁判所と審査結果を争うことができる三審制となっている。
最後に、特許に関わる料金は、出願、審査請求、登録、権利維持などの各過程において特許庁に収める費用(印紙税)と書類作成等を依頼する弁理士への報酬等に大別される。特許の権利は20年間に及ぶが、権利維持の費用は10年を超えると大きく跳ね上がり、権利放棄を促しその技術の普及を促進する仕組みになっている。

 弁理士 産業財産権に関わるすべての事務手続きを代理することができる国家資格保有者です。制度は1899(明治32)年に施行された特許代理業者登録規則から始まり、弁護士に次いで歴史のある資格です。一部の民事訴訟については、弁護士と共同で代理人として訴訟することができます。(日本弁理士会のHPより)