相続税について

相続税について

岩多剛税理士事務所 税理士 岩多 剛 氏(金沢西RC会員)

 相続税がかかる財産は、亡くなった方の死亡時点での財産(現金、預貯金、有価証券、不動産など)と死亡後に受け取った生命保険金・死亡退職金などです。これらの財産は、国(国税庁)が定めた基準にしたがって、たとえば土地は路線価(時価の8割程度)で、建物は固定資産評価額で評価します。
 これらの合計額(「課税価格の合計額」)から「基礎控除額」を差し引きます。平成26年までは基礎控除額は5000万円+1000万円×法定相続人数でしたが、平成27年からは3000万円+600万円×法定相続人数になりました。「課税価格の合計額」が「基礎控除額」を超えない場合、相続税はかかりません。税務署に申告をする必要もありません。
 「基礎控除額」を超える財産がある場合は、基礎控除額を差し引いた残りの金額を法定相続分でいったん分けます。各相続人についてそれぞれ税額を算出し、それらを合計したものが「相続税の総額」になります。そして、これを実際に相続した割合で分けて、配偶者の税額控除などをして、各相続人が納付すべき税額が決まります。配偶者については1億6000万円まで税額が免除されます。
 相続税は取得金額が大きくなればなるほど、税率が高くなります(累進税率)。横に財産が移転する場合は税金をかけないようにして、縦に移転する場合(世代がわり)はたくさん税金がとられる仕組みになっています。
 贈与税については、暦年課税制度(年間110万円まで課税されない)と相続時精算課税制度を選択できます。これらの制度を有効に利用して生前に財産を移転し、相続対策をする方法もあります。
 相続対策には三つあります。一つは遺産分割対策です。どの財産を誰に渡すのかを予め決めておく必要があります。「遺言書」の作成が効果的です。
 二つ目は納税資金対策です。相続税は死亡後10か月以内に申告と納税をしなければならず、原則として現金一括払いです。死亡すると預金口座が凍結されるため、生命保険の活用等による納税資金の確保が必要になります。
 三つ目が節税対策です。たとえば、1億円の預金と1億円の評価の土地を所有している場合、1億円の預金でアパートを建てたとすると、建物の評価は大幅に下がります(約3500万円)。土地も借地権割合に応じて評価が下がります。こうして課税価格が減少するので、相続税が安くなります。
 まずは遺産分割対策と納税資金の確保が最優先で、そのあとに相続税の節税対策を考えるのが良いと思います。