生き方 上手に

生き方 上手に

社会福祉法人 陽風園 理事長 奥 清 氏

 人は皆、日々是好日であることを願っていますが、病気、災難、争いなどで思うようにはいきません。しかし、これは自分で築くものであり、惜しまれて人生を終えたいものです。グリム童話集の中にこんな話があります。神様がロバと犬と猿と人間に、平等に30年の寿命を与えるといったところ、ロバは人間にこき使われて30年は長すぎる、12 年でいいから18年は返上すると言い、犬は18年で結構ですと言い、猿も犬よりちょっと長い20 年で十分と言い、それぞれ12年と10年を返上しました。最後に人間は30年では短すぎる、返上された計40年を私にくださいと言って、人間の寿命が決まったという話です。「人生70古来稀なり」といって、70年を生きることは至難だったのです。
それが昨今、日本の男の平均寿命が79歳、女は86歳で24年連続世界一、70歳以下で死ぬと早死といい、それがむしろ稀となったのです。陽風園に100歳以上が20 人いますが、男2で女18 です。
日本は男女平均でも世界一の長寿国ですが、長生きはお目出度いだけでしょうか?厚労省の65歳以上の調査によると、老後の生活に不安を持っている人が89 %で、具体的には「病気で寝たきりになり家族に介護で迷惑をかけはしないか」が49.5 %、「認知症になり介護で迷惑をかけないか」が49.2 %、あと「独居老人」や「生活資金」の不安が続きます。寝たきりはまだ介護して上げやすいが、認知症を家庭で介護するのは大変です。施設では最新型のオムツカバーを使 うなどして十分な介護ができています。
老後を上手に生きる方法は、①おかげさまでと感謝の心で生きている人は認知症の心配は要りません。自分本位の人は要注意です。②人間は感性の動物です。感受性を磨くことです。③一日1~2回は?を考えることです。脳細胞の血の巡りが良くなります。④自分にあった運動をして身体を動かすことです。但し、転んで骨折をすると寝たきりになりますから要注意です。⑤笑顔で過ごすことです。筑波大学の小田先生が「笑いと健康」という論文を発表していますが、一日200回笑えといっています。笑うと血流が増えるだけでなく、ガン細胞を植え付けたモルモットにカテコールアミンという物質を与えたところ長生きしたが、その含有量が笑うことにより増えるそうです。笑うということは息をハッハッと吐くことです。吐けばまた新しい空気が入ってきます。死ぬことを息を引き取るといいます。「笑う門に福来る」「商は笑なり笑は勝なり」また「怒れる拳笑顔に当らず」という言葉もあります。中国には「一笑一若、一怒一老」という言葉があり、一つ笑えば一つ若返り、一つ怒れば一つ老いると言います。
人間は皆ひ弱な存在です。だから寄り添って励ましあいながら生きるのです。みんなで支えあい、明るくイキイキと笑顔で生き抜きたいと思います。