激動の経済と今年の株価

激動の経済と今年の株価

竹松証券(株) 代表取締役社長 竹松 俊一氏(金沢東RC会員)

 この1年間で経済環境は大きく変わりました。明らかに景気は上向き、株式市場や為替市場にもそれが現れています。2013年は株高と円安がほぼ同時進行した1年でした。アベノミクスのなかで最もマーケットに効いたのは金融政策です。多くの方がアベノミクスによって株高、円安に転換したと思っていますが、私は世界経済の構造的な変化があったためであろうと考えています。過去10年間世界経済の成長を引っ張ってきた新興国(BRICS)に様々な問題が噴出する一方で、アメリカ経済が製造業を中心として力強く回復しています。その背景にはシェールガス革命があります。今、アメリカでは天然ガスを中心にエネルギー価格が劇的に下がっています。また、アメリカでは住宅価格が値上りし、個人消費の拡大につながっています。個人消費はアメリカ経済のGDPの7割を占めていますから、アメリカ経済は自立的な拡大トレンドに入ったと考えています。アメリカにはドル高要因があり、日本には円安要因があります。したがって、アベノミクスがなくてもいずれ為替は円安ドル高に転換した可能性が高いと思っています。
 これから日本経済が良くなっていくためには何が必要かということですが、小泉政権時代の政策にそのヒントがあると思います。小泉政権の経済政策で一番良かったことは、公共事業を抑制しながら長期の景気拡大を実現できたことだろうと思います。この長期にわたる好景気(いざなぎ越え景気)を支えたのは輸出です。輸出を伸ばすことができた理由は2つあります。1つは為替が円安だったこと、もう1つは世界経済が良かったことです。今後、日本はもっと消費税を上げなければならず、労働人口も徐々に減っていきます。個人消費も多くを期待できない。そう考えると、輸出が伸びて、それに対応するために設備投資も伸びていくというシナリオが最も可能性が高いと思います。
 では、どうやってこれから輸出を伸ばしていくのか、これも小泉政権時代と同じで、為替の円安と世界経済の成長ということになると思います。幸いなことに今、円安は国際的に概ね容認されています。となると、あとは世界経済次第です。IMFが発表している経済見通しによると、今年の世界の成長率見通しは昨年の3.0パーセントから3.7パーセントに加速していきます。それを牽引するのが先進国で、なかでもアメリカ経済が非常に良く、2.8パーセント成長と見込まれています。
 株価と経済指標との関係を調べた結果、日経平均と最も相関関係が強いのはアメリカの長期金利だということが分かりました。今まさにアメリカ経済は力強さを取り戻し、金利も上昇傾向にあります。この傾向はしばらく続くであろうと思われますので、私は日本の株価はまだ上昇余地があるのではないか、今年の後半には日経平均1万8,000円、場合によっては2万円をうかがう可能性は十分にあるのではないかという気がします。