漢方から学ぶ健康のコツ

金沢大学附属病院 漢方医学科 臨床教授 医学博士
小川 恵子 氏

 漢方について全般的なお話しをさせて頂きます。
 「疲れやすい」「なんだかこの頃いろいろ考えてしまう」などの症状がありませんか。これらの調子の悪さを改善したいときに漢方医学がお役に立ちます。
 東洋医学では、肝(司令本部)腎(成長・生殖)心(精神活動)肺(呼吸)脾(胃腸)が大切です。「肝が据わっている方」とはどういう方でしょうか?判断力があり、認知機能もある方ではないでしょうか。判断力が鈍っているときは、腎という気をしっかりすると良くなり、指令本部の肝の働きが良くなります。腰椎ヘルニアは、腎の気が良くなると、浮腫みが取れ、神経圧迫が無くなり治ります。
 私は、前田利家公と豊臣秀吉公と同じ名古屋市出身です。お二人は互いに灸をしていたと記されている文献があり、健康に気を付けていたと思われます。秀吉公の主治医である曲直瀬玄朔先生は、晩年の秀吉公の風邪治療に桔梗湯を使っており、そこから消化吸収能力の衰えを補うために漢方を使っていたということがわかります。文献に記されている漢方の使い方を見れば、その当時の本人の状況がわかるというのも漢方の特徴の一つです。
 腎を補う薬に『八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)』があります。それらは免疫力アップの効果があり、腰椎治療にも使われます。漢方では気(エネルギー)、血(血液)、水(血液以外の液体)のバランスが大切です。気を補うことで血の巡りを良くすることが出来ます。
 保険で認められている医療用漢方製剤は148種類、煎じ薬は200種類あり、医師の診察で薬剤投与が出来ます。日本の保険適用の漢方薬は品質の安全性が高く、安心して服用できます。
 漢方を服用することで体を動かせるようになり、健康増進が期待できます。生活習慣を改善するとより効果的です。蛋白質を取ることも必要で、大豆製品だけでなく、肉、魚も取り入れて欲しいです。
 体の健康、精神の安定、養生が大切です。つまり、心身一如が大切ということです。積極的な養生として、何か新しいことをすることもいいです。例えば、禁煙に取り組むことも大切ですし、動かさなかった頭を動かすことは積極的な養生といえます。