東日本大震災における災害廃棄物の概要

東日本大震災における災害廃棄物の概要

石川県環境部廃棄物対策課課長 蔵本 和夫 氏

 能登半島地震では、住宅の全壊554棟、半壊586棟、ビルなど住宅以外の建物被害1,975棟、死者1人で行方不明者はなかった。災害廃棄物(がれき)は輪島市だけで17万7000t、全体で約25万t発生した。阪神大震災では死者が6394人、行方不明は2人、住宅の全壊10万5000棟、半壊14万4000棟で、ビルなどは4万棟ほど壊れている。災害廃棄物は建物で1450万t、道路や鉄道は550万t、合わせて約2000万tだった。
東日本大震災では住宅の全壊が12万7000棟余、半壊が23万棟、ビルなどが5万棟。死者は1万5840人余で、行方不明は3,451人もいる。そのため人命救助が先で、がれき処理はそれが終わるまでできなかった。能登半島地震では行方不明者がおらず、輪島のマリンタウンにできたがれきの山はだいたい1年でなくなった。
さらに、東日本は揺れの後に津波が来た。単に潮をかぶっただけでなく、湾にたまっていたヘドロ状の物がビルや家屋とぐちゃぐちゃになり、処理の足かせとなった。
東日本大震災発生から1年たったが、政府は平成26年3月末を目標にがれき処理を終わらせたいとしている。5月7日現在での処理率は12.3%。なぜ、進まないのか。先ほど言った人命救助の優先があったが、新たに処理施設を造るときには仕様を決定し、入札する必要があり時間がかかる。処理施設は7月ごろにすべて動き出すので、これから先は数字が伸びると思う。
津波の潮をかぶった木材を燃やすと塩分で炉を傷める。これも大変な難題になっている。さらに福島第一原発の事故で放射性物質が放出され、がれきが汚染されているんじゃないか、そんな物を受け入れていいのか、ということがある。
地元で処理すればいい、となるが、がれきの量は、岩手県では現在排出される一般廃棄物の11年分(476万t)、宮城県は19年分(1569万t)もある。仮に現在の処理施設に20%の余力があるとして、10年分なら処理に50年もかかるということになる。
がれきをずっと積んでおくことにも問題がある。有機物を含んでいると夏場にメタンガスが出て火災を起こす。実際に何カ所も起こっている。がれきは潮をかぶっており、不完全燃焼するとダイオキシンの発生も考えられる。
一方、放射能の広がりは、距離の遠近ではなく、その時の風向きや降雨の条件による。福島の原発から北西の方向や常磐自動車道に沿ったラインに濃度の高い地域があり、東北では平泉のあたりがぽつんと高くなっている。こうした科学的なデータを見ながら判断する必要がある。
効率良くやるにはどうしたら良いか、政府の目標に合わせて、我々のできることは何かを考えながら、仕事をさせていただいている。