最近の金融経済情勢について

最近の金融経済情勢について

日本銀行 金沢支店 支店長
宮田 慶一 氏(金沢RC会員)

北陸経済と日本経済の現状
 日本銀行では四半期に1回、支店長会議を行っております。支店長会議では、各地域の取りまとめ支店が当該地域の景気判断を報告します。金沢支店は北陸の現在の景気総括判断を「拡大している」としていますが、「拡大している」は全国で、東海と北陸だけです。東海・北陸が日本の景気を牽引しているといえます。
 2018年3月の北陸短観は、350社を対象に調査をしていますが、これら企業のビジネスマインドを示す業況判断指数は+12となりました。この+12というのは、新幹線開業直後とほぼ同水準で、時系列的にみても高い水準であることから、当地企業のビジネスマインドはしっかりしていると言えます。
 さらに、北陸の景気が好調な理由に、世界経済の拡大の恩恵を最も受けている地域の一つであるからだと思われます。IMFが4月に公表した数字では世界経済は緩やかに安定的に成長するとされておりますので、北陸の景気も同様に安定的に成長すると考えられます。
 鉱工業生産指数も、全国に比して北陸は高くなっております。世界的にスマートフォンや車の販売が好調で、建設需要も旺盛な中、北陸に集積している電子部品、工作機械、建設用機械メーカーの生産が好調なことが主な背景です。
 企業収益も非常に良い状態で、設備投資も高い伸びを示しています。また、賃金が緩やかに増加する中、消費も着実に持ち直しています。
世界経済の拡大を受け、北陸経済は所得から支出という前向きの循環が実現していると言えます。
北人手不足問題の現状と課題
 最近の有効求人倍率ですが、北陸は1.99と地域別で最も高くなっております。有効求人倍率は需要と供給のバランスで決まるものですが、需要面からみれば、北陸はモノづくりの地域ですので、景気が良くなれば人手不足になりやすいといえます。供給面では、北陸は女性と高齢者の就業比率が全国で最も高く、追加的な供給余力が限られています。北陸の人手不足は深刻ですが、雇用・所得環境の改善から消費が下支えされたり、省人化投資が拡大したりと恩恵もあります。また、人手不足で北陸経済が立ちいかなくなっている訳でもありません。しかし、労働人口の更なる減少が不可避な中、人手不足には対処していかなければなりません。高齢者と女性の労働参加率を上げていくことが必要ですし、外国人労働者の受け入れも不可避です。また、より少ない人員で生産・営業ができるように生産性を向上させていく必要もあります。
 働き方改革=単なる残業時間削減ではないと思います。無駄を省きながら、限られた人材をいかに活用するのかということが働き方改革のポイントです。生産性向上を伴った総合的な働き方改革を行えるかどうかが企業の将来を左右すると思います。