最近の労働者気質について(ブラック社員対策)

最近の労働者気質について(ブラック社員対策)

前石川県社会保険労務士会 会長 菊池 寛治 氏

 最近、労働者の気質も変わってきたなと、仕事を通じて感じています。例えば、退職にあたって、有給休暇を全部使って、引き継ぎもせずに堂々と退職を申し出てくる場合があります。会社としては、いかんせんどうしようもない。会社としてはやられっ放しになるしかないのでしょうか。
 労働基準法第39条では、年次有給休暇に関しての規定があり、申し出があれば対応してあげなければなりません。就業規則では、退職についての記載があると思います。「30日前までに申し出て会社の承認を得る」などの決め事をしていることが多く見られますが、違反に対して罰則があるかというとそうでない例が多いわけです。訓示規定という類のものです。
 そこで、現実就労規定というものを決めておくことが対策になります。例えば、「退職日から遡及して2週間は現実に就労しなければならないこと。この規定に違反して事務引き継ぎ等の業務に支障が発生した場合には、退職金を減額する場合がある。」というようなことを決めておけば、2割程度の退職金を減らすこともできるかもしれません。
 また、合意退職と辞職ということの使い分けも大事なことがあります。合意退職というのは、お互いの合意をもって退職を決めることです。辞職というのは一方的に申し出るもので、民法627条とも関係するところです。30日以上前に申し出た場合には、合意退職として承認する旨を就業規則に決めておけば、一方的な辞職として取り扱うことになり、異なった対応方法を決めることができます。
 次に、仕事中に注意したら「適応障害」の診断書を持ってきて、療養のための休職を一方的に求めてくるなどのトラブルもあります。
 最近は、心療内科などで簡単にうつ病などの診断結果を出すようなこともあるように聞きます。こういったことを逆手にやられると、会社としても困ります。
 そこで、まず「休職中の療養で治癒する蓋然性が高いものに限る」など、治る見込みがある場合に休職を認めるようにしておくことで、防衛策がとれます。
 休職期間の定めについても、○○日などと労働者の権利を決めている例が多いですが、「○○日を限度として会社が定める」というように決めておくことで、対象者の会社の貢献度や勤務態度などの事情に応じて決めることができ、より実務的なように思います。
 「治癒」という状態の判断についても、患者が意図的にそのような診断書を書いてもらうようなことになった場合には、意図的に休職と復帰を繰り返すことになります。そのような例では、主治医に面談する権利と社員に同意を求めることを、就業規則などで定めておくことが対策になります。
 トラブルが起きた場合には、経営者は役者になるといいと思います。落ち着いて相手に対処する。そして、就業規則を見直して、防衛策を講じる、ということをおすすめします。