拡がる工芸、繋がる工芸~多様な周辺領域と結びつきを強める工芸の現場~

拡がる工芸、繋がる工芸~多様な周辺領域と結びつきを強める工芸の現場~

(株)ノエチカ ディレクター NPO法人趣都金澤 事務局長
金沢21世紀工芸祭実行委員会 事務局長 高山 健太郎 氏

高山 健太郎(たかやまけんたろう)
(株)ノエチカ ディレクター
 1982年、大阪市生まれ。2004年よりベネッセアートサイト直島のアートプロジェクトに関わる。13年に金沢に移住し、ノエチカのディレクターとしてアートプロジェクト・まちづくり・観光等、文化の経済化・国際化に取り組む。ノエチカの社名の由来は、『ノ』は能登、『エチ』は越前、越中、越後『カ』は加賀、金澤を示し、これらの地域において、展覧会やアートプロジェクト、地域活性化の支援などの『まち』への取り組みと研修会やセミナーなどの人材育成及び組織化などの『ひと』への取り組みを展開し、北陸地域の活性化に取り組みます。
 金沢市内には主な博物館と美術館が35ヶ所あります。金沢中心から2~5km圏内に工芸作家は139人、工芸品店は74件(08’統計)点在しております。人間国宝も多く、人工率から算定すると全国一であります。しかし、北陸の伝統工芸品産業の経済状況は90’年を区切りに09’年には生産額が1/4に減少しております。石川県も14’年には生産額が263億3400万円まで減少し、事業所数も1,616社となっていて1社に4~5人位の小規模で伝統工芸産業を担っている。一方では北陸新幹線効果で金沢21世紀美術館の来館者数は全国1位で兼六園に次いで2番目です。
 私は工芸文化を一般社会にどのように工芸と仕事を繋げていくかと言う仕事をしています。次の4つの企画をご紹介します。

1:工芸のアート化→工芸未来派巡回展の開催
 工芸の種類には産地の工芸、生活の工芸、伝統工芸とありますが最近の若い作家は自己表現として作品を作っています。自分が美しいと思う優れた物をアート化と呼んでいます。「工芸未来派」展は、工芸の“現在性”と“世界性”を問う企画展である。つまりこの企画は、工芸が今の表現であり世界共通の表現であるか、という疑問から生まれた展覧会である。

2:工芸文化の継承と発展→金沢21世紀工芸祭を開催
 世界が認めるクラフト創造都市・石川県金沢市を舞台に初開催する大型工芸フェスティバル。工芸と食が織りなす総合芸術「趣膳食彩(しゅぜんしょくさい)」や、市内3エリアで行う回遊型展覧会「工芸回廊(こうげいかいろう)」など5つのメインコンテンツと、協賛・関連イベントを合わせ、金沢の工芸と街の魅力を広く、強くアピールします。「金沢の工芸を世界に。世界の工芸を金沢へ。」金沢の街を、工芸が集積、対流、発展する「港」にするべく活動して参ります。
・趣膳食彩:この日のためだけに用意されたプレミアムな世界観を五感で味わえる、一期一会の総合芸術。金沢の街を深く知るディレクター陣が、工芸作家や料理、空間をコーディネートします。
・工芸回廊:それぞれに独自の空気感を持つ金沢市内3エリアで行う展示イベント。通常の展示空間とは異なる場所と見せ方で、新たな工芸の魅力を発信します。回遊することで街の多様性も感じられ、作家やギャラリストと交流することもできます。
・金沢みらい茶会:「茶の湯」文化が根付く金沢ならではのイベント。茶席を「トラディショナル」「コンテンポラリー」の2大テーマで実施します。

・金沢みらい工芸部:未来の工芸を支える使い手と作り手の育成を目指します。若手工芸作家が講師となり、伝統工芸の技法や最新テクノロジーを体験するワークショップをはじめ、作家の想いを追体験できるアートワーク寄りのプログラムを指導。工芸の可能性を楽しみながら体験できる、部活動のようなコンテンツです。

・金沢アートスペースリンク:金沢市内及び近郊のギャラリーやアートスペース計26カ所が連携して行う展示企画です。アートスペースをそれぞれの傾向により「美・鑑」「エッジ・実験・周縁」「暮らし・デザイン・広がり」の3グループに分類し、グループごとに金沢アートグミにて展示を行います。展示に併せて展覧会情報、コラム等を掲載したタブロイドも発行し、金沢の美術シーンを俯瞰します。

3:工芸の用途の拡大→ホテルでのサービス
・HATCHi金沢:シェア型複合ホテルには、既存のスタイルにとらわれない宿泊スペースと、地域に開かれたシェアスペースがあります。
宿泊スペースは、プライバシーを重視した個室タイプから、シェアするメリットを重視したドミトリータイプまで、地域ならではの滞在スタイルに合わせた宿泊の設えと、THE SHARE HOTELS独自のセンスによるサービスを提供します。シェアスペースは、宿泊客や地域の住民、プレーヤーみんなの活動のきっかけとなる場です。カフェやショップ、イベントを通じて、その地域のリアルなひと・もの・ことに出あえます。

4:工芸資源の活用→文化観光
・金沢クリエイティブツーリズム:市内に点在しているアーティストや工芸作家のスタジオやアトリエ、近代建築や町家・茶室など、文化的なスポットを巡りながら、「創造都市金沢」の深い魅力を味わう試みです。