志賀原子力発電所の津波対策と今夏の電力需要

志賀原子力発電所の津波対策と今夏の電力需要

北陸電力(株) 執行役員石川支店長 塚 宏之氏(金沢RC会員)

 志賀原子力発電所を含め、全国の原子力発電所では立地を検討するときに地震対策をとります。徹底した地質調査で、地震の原因となる活断層は避けています。また、強固な岩盤まで掘り進み、岩盤に直接建設するので、地震時の揺れも一般の建物の2分の1から3分の1程度に抑えることができます。
耐震性では、一般の建物の3倍の基準で設計されます。人間は間違えるものという前提で、原子炉には自動停止機能を組み込んでいます。能登半島の周りには幾つかの断層がありますが、一番影響の大きいのは笹波沖断層帯です。長さ45kmでマグニチュード7.6の可能性を推定しています。600ガルという揺れの強さを想定し、耐震設計を行っています。
平成19年3月25日に能登半島地震がありましたが、この時はマグニチュード6.9で、発電所において観測された揺れの大きさは292ガルでした。強い岩盤の上なので、揺れが少ないことが実証されています。
志賀原子力発電所における津波の評価については、土木学会の手法に基づき過去の津波の評価も含めて分析してあります。最大と想定される秋田・山形県沖にある日本海東縁部の地震はマグニチュード7.85を想定しており、発生する津波は5m程度になると思われます。この想定に対して、志賀原発の敷地は標高11mあります。大切な非常用ディーゼル発電機は15mほどの場所にあり、なおかつ地中に密閉されているため安全が確保されています。
福島第一原子力発電所の事故についてですが、電源を失ったことにより原子炉、燃料プールの冷却機能を失ったことが主な問題として挙げられます。事故が起こった時には、「止める」「冷やす」「閉じ込める」ことが大切な点です。しかし、すべての電源を失ってしまった結果、冷却機能が働かず、水素が発生、水素爆発を引き起こし、放射性物質を放出してしまいました。
福島第一の事故を振り返り、志賀原子力発電所においては電源、冷却設備の故障時対応を4月までに完了しています。また、標高15mに達する鉄筋コンクリート製の壁の強化、大容量の非常用電源車の配備や、3系統あるすべての送電線から非常時にも電源を得られるような改善など更なる対策を進めており、一層の信頼を高めていく努力をしています。
電力の購入契約を結んでいる日本原電敦賀2号機が、5月7日からトラブルにより停止中です。また、現在停止中の志賀原子力発電所1、2号機が夏季になっても停止している場合には、電力供給が需要予測を下回ることになり、非常に厳しい状況です。しかし、状況に応じて水力、火力などを調整するなどして安定供給に最大限の努力をしていきますので、節電などのご協力をよろしくお願いします。