器の心

器の心

陶芸家 山口 佳代子 氏

 器は、日常よく使う道具のひとつで、とても馴染みのあるものです。陶芸を仕事にしている私にとって、器といったものは何なのかを、制作している中でよく考えたりします。
 辞書によると、「器とは、何かものを入れるためのものである」と書いてあります。では、「何か」とは一体何なのでしょうか。
焼物で言いますと、器にはお料理が盛られることが多いです。そのお料理には、農家の方が手間暇かけて育てられたお野菜や、酪農家の方が大事に育てた生き物など、様々な人が関わって生まれた食材を使い、誰かのために作られています。
たくさんの思いが重なり、できたお料理が盛られている器を目にしたとき、私は物事を汲み取るように、そして包み込むようにあるものなのだなと感じます。それは、花を生ける花器にも同じことが言えると思います。
目に見えるものであったり、見えないものであったり、必ずしも器には目に見えるものだけが入っているわけではありません。
私にとっての器とは、思いをくみ取るもの、そこにある様々な出来事や背景を包み込むように存在しているもので、柔らかく、優しく、強く、儚いものです。そういった考えや思いを、器の中に閉じ込めることができるよう、また手にした人に感じてもらえるように制作をしています。