企業のメンタルヘルス対策

企業のメンタルヘルス対策

(株)損害保険ジャパン 金沢支店長 近藤 浩之 氏(金沢西RC会員)

  うつ病等の心の病に罹患する国民が年々増加傾向にあり、また、企業活動にも大きな影響を与えています。心の病に係る医療費も膨大な金額に及んでいる他、国民の自殺に直結する問題でもあり、国(厚生労働省)も様々な対策を実施し始めています。
日本は1998年から連続14年間自殺者総数が3万人を超えており、その内30%が被用者・勤め人という実態で、職業性ストレスと自殺に関連性が強いことから、厚生労働省は自殺対策の一環として「職場におけるメンタルヘルス対策」の実施を推進しています。この3万人という数は、東京マラソンのエントリー数とほぼ同じで、都庁前でスタートを待つ人達が、1年間で消えてしまうイメージです。
職場でのストレスが原因で心の病が増加していることを裏付けるデータとして「精神障害による政府労災の請求・認定件数」が年々増加しています。直近2011年度データでは、1272件の請求件数があり、325件が認定を受けており、過去最高値となっています。
厚生労働省では、企業がメンタルヘルス対策を取り組む上での具体的な「方法・指針」を定めているが、現時点では、当該指針に強制力はなく努力目標となっています。しかし一方では「労働安全衛生法の一部を改正する法案」が審議中となっており、本法案が成立すれば、企業のメンタルヘルス対策が、労働安全衛生法で「義務付け」されることになります。
企業のメンタルヘルス対策は、4つの観点で企業の重要な経営課題と位置付けるべきです。特にコンプライアンスやリスクマネジメントという受身の姿勢ではなく、メンタルヘルス対策が、企業の職場の活性化、従業員の生産性・やりがいの向上に資する取り組みで、企業のCSR活動としても重要であり、今後積極的に取り組むことが求められることになります。