九谷焼360 年の歴史と能美市

九谷焼360 年の歴史と能美市

能美市市民生活部観光交流課 主事
北村 周士氏

 九谷焼を取り巻く状況は、非常に厳しくなっています。かつて150億円の売上だったのが、現在は47億円になり、この20年で3分の1になってしまいました。山中漆器の売上が100億円と聞いていますので、それと比較しても厳しいことをご理解頂けるかと思います。
<問題>誕生から360年を迎える九谷焼。360年を一区切りとする語句は?
<選択肢>(1)一暦、(2)一世、(3)一運
 答えは(3)です。360度で一円を描きますが、中国では360度で宇宙を一回りするという意味で、一運というようです。九谷焼にとって非常に大切な節目になると思います。
 九谷の様式は、古九谷、木米、吉田屋、飯田屋、庄三、永楽の6つです。吉田屋は、一般的に古九谷焼と言うとイメージされる姿のものです。飯田屋は、赤と金で色付けする赤絵と呼ばれるものです。庄三は、寺井の九谷庄三が編み出した技法です。
 九谷焼のポイントは、色絵を施すこと、メッセージ性があることです。信楽焼などは、焼いて終わりです。ところが、九谷焼は描けるというところに一番大きな違いがあります。そして、時代に応じて変化し続ける陶磁器だということも重要です。
 寺井の九谷庄三が編み出した技法で、「割取」というものがあります。これは、お皿の中に円を描き、その中に絵をおさめる様式です。一つのお皿の中で三つの様式がすべて楽しめる技法で、九谷焼が世界に飛躍していくきっかけになりました。
 能美市は古九谷とは関係がなく、明治、大正、昭和の九谷焼と関係しています。この時代に、斎藤道開と九谷庄三が出てきて、多くの弟子を抱え、問屋がたくさんできました。その時に誕生したのがジャパン・クタニです。後ろが透けるくらいの非常に薄い焼物で、ヨーロッパでも飛ぶように売れました。
 これからの九谷焼の方向性ですが、萌えキャラ、カブトムシ、チョロQなどを九谷焼で作っています。それぞれ10万円ほどするようです。また、私が関わったのがウルトラマンです。ウルトラマンの脚本を書かれていた著名な脚本家の佐々木守さんが、能美市出身ということにちなんで、ウルトラマンの絵付けができるような教室を作り、2年半で4,000体を販売しました。
 東京オリンピックの招致が決まりましたが、このマークは五彩と言われる、赤、黄、緑、青、紫を使った花が描かれています。これを九谷焼でやりたいと思い、JOCに打診しているところです。
 九谷焼の未来は厳しいところもありますが、石川県全体にも影響力を持っていると思いますので、いま一度、九谷焼を見つめ直して頂ければ幸いです。