世相雑感

世相雑感

石川県信用保証協会 会長 杉本 勇壽 氏

 リーマンショックから約5年。今までにないデフレが続き、冷え込んだ時代であった。政権交代以来、円高傾向から円安傾向に転じ、4年7ヶ月ぶりに株価が1万3,000円台まで回復した。輸出産業には大変な追い風であるが、石油や鉄鋼、食料品など輸入に頼っている業界には痛手である。その中で中小企業がどこまでついて行けるかというと体力的に難しい企業がたくさんある。このように円安、円高の問題をとってみても様々な利害関係があり、どの企業にとっても良い政策を打ち出すことは非常に困難である。またグローバル社会の経済の中では一国の政策で景気を変えられるという状況ではない。日本がこれからどのように繁栄を築いていくかという大きな課題があると感じている。
そんな中、2年前に3.11東北大震災が起こり、福島県の原発事故があった。今なお、16万人の避難者の方が故郷に戻れないという現状が続いている。他にも政府の曖昧な報道により、福島県の農産物などは国の安全基準を達成しているにも関わらず、消費量が増えていない。そして世論の70%は脱原発を突きつけている。しかし電力の30%を賄ってきた原発すべてを30年~40年かけて廃炉し、太陽光などの自然エネルギーだけで賄いきれるか疑問である。また国民には節電が強いられるだけでなく、代替エネルギーの開発コストが電力料金に跳ね返ってきた際に、それで納得できるのかどうか非常に疑問を感じるところである。もっと広範な議論があってしかるべきではないだろうか。いずれにしてもこれからの電力に原子力は必要欠くべからざるものである。
3月31日で能登有料道路が無料化になったが、当時、国の補助金がつかない中、能登の振興には時間短縮が不可欠ということで有料道路としてスタートした。中能登半島地震が起こり、道路のいたるところが寸断されたが莫大な震災復興予算を使い復旧することができた。しかし工事の3割~4割が落札不調であったため工事が進まない状態が続いた。その原因は公共投資の圧縮により、経営状態が厳しくなり倒産する企業が続出し、職人の高齢化、また若者の建設業への就職離れが進んだためである。このことからも定期的な公共投資は必要であり、建設業の衰退を防げるのではないかと思っている。
最後に日本は技術立国である。熟練工が重宝され、技術で成長してきた日本経済を考えるときに現状で良いのか疑問を感じる。これからの人材養成は教育改革が必要ではないか。皆が大学に進み、一流企業を目指したときに日本はどうなるのか。また戦後の偏差値教育やゆとり教育、現在の英語教育に疑問を感じる。教育は人間を作るものである。今や日本の民主主義教育は個人主義教育に変化している点が気がかりである。今一度日本人の優秀性を見直し、世界に冠たる日本を作っていかなければならないという思いがしてならない。