ワークライフバランスの現実と今後

ワークライフバランスの現実と今後

アライブキャリア(株)代表取締役社長 高井 佑讃史(しんじ)氏

 私どもの会社でしていることをふまえ、ワークライフバランス(WLB)のことをお話しします。まず、松本仁社長の日光リネンサプライとの事例を紹介したテレビ番組を見て下さい。
(日光リネンサプライでは企業内保育ルームを開設し、新規採用の6人の女性が利用している。工場の立地条件から人が集まりにくく、若手の人材確保のために開設を決断。採用された母親も「すごく決め手になった」「民主党の子ども手当よりありがたい」と話した。開設・運営をサポートしたアライブキャリアは元々人材派遣がメーンだったが、女性の子育てを支援するため人手不足の保育園への保育士派遣に力を入れ、企業内保育ルームの支援もしている)
 そもそもWLBとは、仕事とそれ以外の活動を、それぞれを充実させるような働き方――と定義されています。最近は、男性の育児休暇や「育メン」(子育てを楽しんで行う男性)という言葉もあります。しかし、昭和20年生まれの私の父は「男がおむつを代えるなんてどういや!」と言う人で、世代間ギャップはあります。
 WLB推進のメリットは、1. 本当に必要な業務の見直しによる生産性の向上 2. 社員の健康管理、健康問題による訴訟リスク軽減 3. 優秀な人材確保 4. 企業イメージの向上が挙げられ、導入すれば良い循環が生まれます。ユニクロは業務時間を午前7時~午後4時までとし、それ以降は自己啓発に使えと指導しています。
 中小企業が抱える課題の1番は人材確保、2番は従業員の自己啓発、3番目は生産性が低いこと。WLB推進のメリットは、すべてに当てはまります。
 日光リネンサプライさんの事例では、晴れた日の散歩や給食もあり、保護者との記録のやりとりもしており、おおむね好評です。
 課題として浮かび上がったのは、2方向の避難が必要だったため、外部に非常階段を作ったのがコストアップの原因になったこと。普通の階段も子どもには危険で、安全面への配慮にも気を配りました。一番のネックは、周囲の理解。子どもが風邪をひいたら母親は仕事を休むことになり、保育ルームの子どもがまとまって風邪に罹ることもありうるからです。
 しかし、若い母親たちは非常に良く働き、小さい子どもがいることで職場の雰囲気も良くなりました。人員の補充・追加もスムーズになりました。
 WLBは、企業の収益を上げるための道具の一つかなと考えています。残業を減らし、退職者を減らします。子どもまで面倒をみてもらうと、何とかこの会社のために、という気持ちも芽生えてきます。人材へのケアが、企業の収益にもつながっていくと思います。