タイの教育現場に触れて

タイの教育現場に触れて

青年海外協力隊員OG・日本語教師 木南 舞香氏

 2007~09年の2年間、タイに派遣され、日本語教師として活動してきました。
タイの挨拶で、「おはようございます」「こんにちは」に相当する「サワディーカー」という言葉があります。この挨拶をするとき、笑顔でしなければならないという慣習があります。日本人の私たちも、朝、おはようを笑顔で言うことで気持ちよく一日がスタートできるのではないかと思います。
タイは親日家も多く、日本語教育が盛んで、大学だけでなく中学校、高校でも第2外国語として導入されるようになりました。日系企業も多いですし、通訳や旅行者のガイドとしての仕事もあります。日本語ができれば公務員の3倍の給料がもらえます。
私が教えてきた学校は、ベンジャマラートランサリト3中高校というところで、日本語は週5、6時間教えます。レベルは超初心者向けで、ひらがなも書けないで卒業してしまう子もいるような状況です。
朝礼は毎日します。校庭に出て国旗掲揚し、国歌斉唱をします。また、王様がいる方向に一礼することも特徴的です。タイは仏教国なので、5分間の瞑想をする伝統もあります。
教室は小さなちゃぶ台が幾つかあり、コンクリートの地べたに座って勉強をします。このような環境ですからカンニングもしたい放題です。文房具を持ってこない子も多く、机に一つあるものを皆で使ったりもします。学習環境が整っていないのです。
日本からも教育のための支援物資が多く届いていましたが、授業で使う時間の余裕がない、またどのように使っていいかわからないという理由で持ち腐れになっていました。
子どもの遅刻、早退は多く、教師も来ないことがあるということで、私が行ったときにはまさに学級崩壊の状況でした。
家庭の事情から退学する生徒も多くいます。国が決めているカリキュラムに学校そのものがついていけていない状況も大きな課題です。
このような中で、日本語を勉強する意味はあるのか?と疑問を持ちました。学ぶ目的、将来の夢を持たせなければならないと感じました。
改善として、会話カードというものを使い、出席スタンプを押させることで遅刻防止対策をしました。J-POPのカラオケを一緒に歌うことによって、日本語に馴染んでもらう工夫もしました。
ホームステイプログラムでは、日本人駐在員宅に1泊2日して触れ合いの機会をつくりました。その時は皆、これまでになく熱心に勉強してくれました。
最後には日本語を勉強する目的の理解も進んだように感じ、教育の成果があったように思います。