ギャラリーの仕事 アートとマーケットの話

ギャラリーの仕事 アートとマーケットの話

ガレリアポンテ本山 代表 本山 陽子 氏

 皆様、こんにちは。ガレリアポンテというギャラリーをしております本山陽子と申します。
 今日はギャラリーの仕事、アートの価値や楽しみ方についてお話したいと思います。
 2008年に犀川大橋の近くにギャラリーを開廊しました。ガレリアはギャラリー、回廊の意味で、ポンテは橋という意味があります。犀川大橋の近くということと、ギャラリーが美術と人との架け橋であるという意味をこめました。金沢はもともと古美術商の多い街で、21世紀美術館が出来て約10年経ちますが、その間現代アートを扱うギャラリーも増えてきたように思います。金沢アートスペースリンクというギャラリー間を繋ぐ仕組みも始まりました。地方都市の中でも金沢は伝統工芸の土地柄や美術工芸大学や卯辰山工芸工房など研究施設があったり、美術を習っている方も身近にいらしたり、美術に親しみの深い土地柄だと思います。
 ギャラリーの仕事は大きく分けると3つあります。一番目は新しい作家を発掘するということです。美術作品を見る場所として美術館がありますが、美術館は評価の定まったものを取り扱っていることに比べ、ギャラリーは作家の作品を販売することで成り立っています。いち早く評価の定まっていない作家さんを取り上げて世の中に出していくという役割を担っています。
 二番目に作品が生まれる過程に関わるということがあり、作家さんの制作環境を整えることや次の発表の方向性を一緒に考えるなど2年くらいの長いスパンで仕事しています。
 三番目は作家さんの作品の発表機会を整えることや、顧客に販売した作品の転売・修復などのアフターフォロー、作家さんのマネジメントのようなことも行なっています。作品の意味や価値を言葉で伝え販売することがギャラリーストの大きな役割であり、見たこともない価値を作り出している作家さんにリスペクトし、その自身のステイタスを上げていくこともギャラリーの仕事だと思っています。
 美術には、価格など商業的価値、ステイタスやもたらす意義など社会的価値、本質的な美術そのものの価値など3つの価値があります。美術品の価格は一度つけると下がることがなく、受賞数など実績の積み上げで上がっていきます。美術の市場規模は日本で1000億円くらいですが、世界では2014年で6.7兆円にもなります。
 アートは投資になるかというと、すぐに結果が出るものではなく、購入行為こそがアートであり楽しみとして捉えていただきたいと思います。重要文化財や国宝も作品の良さを認めて次に伝えようとした人たちのおかげで私たちが今作品に触れることが出来るわけで受けとめる方の存在も非常に重要だと考えます。
 アートに触れたときの「わからなさ」を感じることがあると思います。その時は自分の枠をはずして考えて感じる喜びを与えてくれるものだと思っています。皆さん、何も考えずに5~10センチ径の〇を描いてみてください。〇を描くときに反時計回りに描いた方は芸術脳です。アートは右脳も左脳も両方とも使うものだと思います。
 自分の中の美術に対する見方を作るには、差別なく色々観ていくことで自分の中にメモリとかゲージを作っていくことができると考えています。アートというものはスポーツと一緒で誰も最初から上手くできるわけでなく、訓練したり慣れていくことで上手くなるわけで、美術も全く同じで慣れと訓練だと思います。是非皆さんも美術にたくさん触れていただきアートのゲージを増やしていただければ嬉しく思います。