となりの会社の労使トラブル

となりの会社の労使トラブル

社会保険労務士山田事務所代表 三井 敏彦氏

 労使トラブルの労働基準監督署への相談件数は、全国で3年連続100万件を超えており、金沢の労働基準監督署でも毎日約20件の相談がある。
相談内容の中で最も多いのが「解雇」に関する相談である。たとえば、面接時に言っていた資格を持っていなかった場合でも、入社後15日を経過すれば、「半月分給与+解雇予告手当1カ月分」が必要となり、会社は無駄な出費を強いられることになる。
このようなトラブルを防止するには、1. 採用時に適性検査を導入し、過去の採用者などと比較するなど、客観的な基準で採用を行うこと、2. どのような場合に解雇になるかを就業規則で定めておくとともに、社員に問題行動がある毎に「反省文」や「始末書」を書かせて「証拠書面」を残しておく――など、解雇の準備をしておくことが必要である。
一時期、一部弁護士等のビジネスのターゲットとして、消費者金融会社に対する「過払い金請求」が盛んだったが、「未払い残業代の請求」が次なるターゲットとして話題になっている。賃金の支払いの時効は2年であり、今後「未払い残業代」が経営者にとって大きな負担として、のしかかってくる可能性がある。
労働基準監督署の指導で、不払いになっていた割増賃金が過去にさかのぼって支払われた額(支払額100万円以上)は、平成22年度で123億2358万円、企業数で1386社となっている。
このリスクに対応するために、タイムカードをやめて出勤簿にするのは最悪。「残業命令・申請を厳格にする」「残業の内容を細かくチェックする」など管理体制を整備しなければならない。
そもそも、残業は仕事の効率が悪くなっている時間帯の作業に対し、割増賃金を払う仕組み。翌日の体調にも影響し、合理的でない。
また、現在40人に1人の割合まで増加してきた「うつ病」についても、健康診断時にうつ病診断が義務付けられる見通しであり、就業規則での休業に関する規定にも注意を払う必要がある。
このように、労務管理は、トラブルに対して場当たり的対応に追われる「火消し人事」ではなく、法改正や会社内外の問題をベースに必要な対策をその都度講じるとともに会社のシステムに組み込み、トラブルの発生予防や社員の安心感を高めていく「インフラ人事」や、会社の人材目標を実現するために必要な施策、対策を構築して会社内のコミュニケーション環境や自主的活動が促進される「戦略人事」を目指さなければならない。
そこで、人事労務に関する専門家を適切に選んで、「インフラ人事」や「戦略人事」を構築するパートナーとして活用することをお奨めする。そうすれば、社長は経営に専念できる。