たばこの害について

たばこの害について

(株)スパーテル代表取締役 橋本 昌子 氏(金沢西RC会員)

 私は学校薬剤師をしていることから、定期的に小学校6年生を対象に「たばこの害」について講義をしています。今日はいつも小学校で行っている講義の内容に沿って話をします。
まず、薬というのは体の中に備わっている自然治癒力を引き出すのが大きな役割ですが、体にとっては「異物」です。たばこやアルコール、麻薬や覚せい剤も「異物」になります。ドラッグの常習者は、まずたばこや飲酒から始めますので、たばこやアルコールは入門薬物(ゲートウェイドラッグ)と言われます。したがって薬物使用を防止するためにも、子供にたばこやアルコールの危険性をきちんと啓発していくことが重要です。
たばこに含まれる三大有害物質はニコチン、タール、一酸化炭素です。それ以外にもたばこには約4000種類の化学物質が含まれ、うち有害なものが200種類以上あります。有害物質や発がん性物質には、一酸化炭素のようにたばこのフィルターを通過してしまうものと、ニコチンやタールのようにフィルターで捕獲できるものがあります。受動喫煙が問題なのは、フィルターで捕獲しないままの有害物質をより多く含む煙を、家族など周りの人が吸いこむことになるからです。
たばこの害は、一般に肺がんになるリスクが高くなることで知られていますが、喉頭がん、咽頭がん、食道がんなど煙の通る道に発生するがんはもちろんのこと、膀胱がん、すい臓がん、肝がんなど他のがんの発症リスクも高くなります。また、たばこを吸うと動脈硬化が進んだり、血圧が高くなるので心臓にも負担がかかりますし、肺に直接煙を入れるので気管支の粘膜が炎症を起こし、気道が狭くなり、高齢になると慢性閉塞性肺疾患になったりします。さらには、口腔内の免疫機能を弱めるので重い歯周病になりやすい、末梢の血管に血液が流れなくなって手足の先が冷たくなるなどの影響もあります。
経済面でも1箱250円のたばこを2箱吸い続けるとして年間で18万円、30年で540万円もかかるほか、間接費として病気になることで要する医療費が年間1兆3000億円に上るという試算もあるなど、損失が大きいといえます。
たばこへの依存症については、たばこの中に含まれるニコチンが脳の神経伝達物質のバランスを崩し、切れるといらいらしたり禁断症状が起きるという仕組みになっています。ストレスを解消するために吸うという人がいますが、このストレスはたばこに依存することによって生じるストレスなので、たばこを吸わなければ縁のないストレスなのです。
受動喫煙のほか、子供によるたばこの誤飲にも注意が必要です。皆さんも今日を機会にたばこをやめる、もしくは減らす、少なくとも家族の前では吸わないようにしてはいかがでしょうか。