たかが旅館、されど加賀屋

たかが旅館、されど加賀屋

(株)加賀屋金沢茶屋営業部長 稲葉 義弘氏(金沢西RC会員)

 加賀屋は日本一の旅館といわれていますが、何を根拠にそのような評価を受けているかというと、旅行新聞新社の「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で総合1位に31年連続で選ばれているからです。採点は、旅行会社の社員が「もてなし」「料理」「施設」「企画」の4区分を5点満点で評価し、加賀屋はその合計点の「総合」で1位だったということです。しかし部門別では、僅差ではありますが、加賀屋は「施設」を除いてすべて2位になっており、女将は、とりわけ「もてなし」部門で1位をとるまでは死に切れないと申しております。
マスコミ等に「日本一」とよく取り上げられますが、一時期「どこが日本一だ」とお客様が目を皿のようにして社員の一挙手一投足を観察されたこともあり、我々はあまり言わないようにしています。
明治39年9月10日、津幡出身の小田與吉郎が12室30名収容で創業し、昭和14年、2代目与之正の妻となった元津幡町長・村家の娘、孝(たか)が加賀屋の礎を築いたのです。
この先代女将の転機になったのは、当時、和倉へは七尾から船で客が来ていたのですが、4館に分宿する大口客の出迎えのときに、つい寝過ごして船が着いた後に行ったため、客から「和倉で一番おぞい宿の女将が一番遅れて来るとは何事だ」とえらく怒られ、宿に着いたら灰皿の中にまだ吸殻が残ったままになっており、更に怒られたことだそうです。
先代女将は「一流の旅館にならなければ」と決意します。また、石川県で一番偉い知事がお客に一人ひとり挨拶しお酌している姿を見て、玄関だけで迎えるのではなく、宴会でお酌をしたり、部屋へ挨拶に行くことを始めたそうです。
そのほか、お客が箸をつけていない料理があると別の料理に換えたり、客室係を2人にしてより細かくお世話する、常連客の好みを控えておく、お客の好きな煙草や酒がないと、遠くまで車を走らせて用意するなど、お客様のご要望に「できません」「ありません」と言わないようにしました。
加賀屋のサービスとは何かというと「プロとして訓練された社員が、お客様のために正確にお役に立って、お客様から感激と満足感を引き出すこと」と定義しています。気働きで笑顔、お客様第一主義ということですが、我々のサービスの質を上げる源はお客様のご意見、ご指摘、お叱りです。お客様の声を大切に、真摯に受け止めて更に上を目指したいと思います。