お掃除(5S)と企業経営

お掃除(5S)と企業経営

組織開発サポート代表 奥野 肇氏

 整理、整頓、清掃、清潔、躾を「5S」という。その意味するところはそれぞれ、
整理=必要なものと不要なものを分けて、不要なものを捨てること。
整頓=必要なものをすぐ取り出せるようにすること(例えば、本棚は本の大きさでなく作者やジャンル別にすると取り出しやすい)。
清掃=汚れ、ゴミを取り除くこと。
清潔=整理、整頓、清掃(3S)を続けること。
=ルールを決めてそれを守ること。
であり、製造業にとって重要な品質の向上には「5S」が基本となる。
それでは、なぜ「5S」をやれば良いのか、「割れ窓理論」と「場の方程式」という二つの理論的な根拠を説明する。
「割れ窓理論」は、比較的治安の良いところで、ボンネットを開けたまま車を1週間放置しても何も起きないのに、その車の窓を割って放置すると、たちまちバッテリー、エンジンパーツ、車中の物が次々と盗まれ、24時間以内に車が無残な姿になった、というアメリカでの実験結果に基づく。
犯罪の多発に悩まされていたニューヨーク市は、地下鉄の落書きなど軽犯罪を徹底的に取り締まることにより、殺人・強盗などの凶悪な犯罪の大幅な減少に成功した。このように、人は似ている者に染まってゆく、結果社風や家風というものができる。
次に「場の方程式」は、B(行動)= f(P:性格*E:環境)。これは行動が、性格と環境の関数であり、この三つはそれぞれ関係していることを意味する。したがって、どれか一つを変えたいと思ったら、残りの一つまたは二つを変えることにより、最初の一つを変えることができる。自分(性格)を変えることは難しいが、「5S」により環境を変えれば、性格や行動も必然的に変わる。
「5S」のポイントは、①直置きしない ②棚の上に物を置かない ③チョイ貼り・チョイ置きしない ④直角・並行に置く―を実践することである。
最後に、「5S」の効果は、二つある。先の「場の方程式」に当てはめると、一つには、環境が変わることで迷いを払い、気付きを促すこと、二つ目は、行動が変わると改善を促し、無駄をなくすこと、その結果企業は利益を上げることとなる。
来年はアメリカやロシア、フランス、中国など主要国で大統領選挙や指導者の交代があり(2012 年問題)、また経済や環境など他の分野でも今までの歪みが表面化してきており、どんな事象が起きるのか予測が困難であるが、「5S」は日本に根付いている「文化」であり、その実践はこの予測困難な時代を乗り切る備えとなる。